【読み:まつば】
花魁の使用した簪です。先端は耳かき、その根元には松葉をかたどった矢印状の形になっていて、全体は特に飾りはなく、へらのような形をしています。花魁の指す松葉簪の素材は鼈甲で、とても高価なものでした。江戸時代には奢侈禁止令があり、贅沢品、華美なものは御法度であったため、耳かきの形をさせることで、実用品として言い逃れるようにしていました。 材料の鼈甲は、白甲と呼ばれる、最上級品を用いていました。白甲は、甲羅の背の部分、薄黄色に透けている部分を利用します。しかし、白甲ではなく、卵甲または牛甲でできている、という言い逃れも用意されていました。卵甲は、卵の白身を加工した材料を基に白べっ甲に似せ製作されたもので、牛甲は、牛の蹄を利用して加工したものです。いずれも、ぱっと見には白甲と見分けのつかないほど精巧に作られていました。
花魁の簪は長めのものが多かったようで、それを前髪、後ろ髪に数本ずつ挿して、姿を大きく立派に目立たせる意味合いもありました。簪の本数や飾り付けの大きさは、いでたちのゴージャスさ、あでやかさを演出する道具でした。 現在でも、松葉タイプの簪はあり、日本のみならず海外でも「芸者さんの装飾品」として珍しがられているようです。