【読み:きゅうちゅうふく】
宮中で着用される公の服装のことです。天皇制が政治の中心をなした平安時代は、公事がすべて年中行事化していたので、その服制も整い、「礼服」、「束帯」、「衣冠」、「女房装束」、「小袿」が有職として、あらゆる面で重要視されていました。
それが、武家政治となってからは、それらの服装を着用することも少なく、簡略化の道をたどり、江戸時代末に及びました。しかし、幕末に尊皇攘夷が叫ばれてから、嘉永御再興の服装が宮中で行なわれ、王政復古がこれにいっそう拍車をかけたかのように思われましたが、明治維新後は、天皇から服装を西洋化される旨が発せられ、1872年には、「礼服」を洋服とする旨が出され、翌年から施行されました。
また、1886年には、婦女の服制も洋服となり、「礼服」には、「大礼服」、「中礼服」、「小礼服」、「通常礼服」の区別ができました。「袿袴」を婦女の「礼服」や「通常礼服」と定めることが行なわれていましたが、1886年以降は、「袿袴」は「祭事服」に転じ、ほとんどの場合、洋服を着るようになりました。とくに、昭和に入ってからは、西洋風をとり入れる傾向が著しくなりました。