【読み:かじばおり】
火消しが用いる羽織をいいます。火消しには、『大名火消し』と『町火消し』とがあり、徳川八代将軍吉宗の時世に『町火消し』ができるまで、もっぱら『大名火消し』が自分の所轄をとりしきっていました。『大名火消し』がはおる『火事羽織」は、ラシャ製で、陣羽織から発したと考えられます。背に大きな定紋をつけ、羽織の意匠も各自の趣向にまかせて、大胆奇抜で、なかには、牡丹唐獅子などを切りばめにした、徳川宗春所有のような豪華なものもありますが、一般は、白、黒、茶色、緑色などの無地物が多いです。裏は、緞子を用いていました。仕立ては、袖口のある羽織仕立てでした。『町火消し』のものは、羽織とはいわずに半纏といい、組、持ち場によって記号が異なり、多くは、紺木綿の刺し子製に一つ紋をつけ、裏地は江戸時代末期になると武者絵風な木綿友禅をつけたものもできました。