【読み:のしもん】
熨斗紋は熨斗鮑を文様にしたものです。 熨斗鮑は、鮑を薄く剥いで、平らに干し伸ばしたもので、進物などに添えられました。鮑が様々な伝説をもっていること、それを干し伸ばしたものが「のす」=長く伸びていることから、「永く」「延長」「伸びる」などの意味になり、祝意をあらわすものとして、進物に添えられるようになりました。 昔は方形の色紙を上が広く下の狭い細長の六角形に折り畳み、その中に熨斗鮑を小さく切って張り、それをお祝いの贈り物に添える習慣がありました。 その熨斗鮑を、図案化して文様にしたものが、熨斗紋です。
鮑は古くから食されていたようで、縄文時代の遺跡から鮑の殻や、鮑を取るための道具である鮑おこしというものが発見されているそうです。
鮑は不老不死の仙薬であるという伝説があり、秦の始皇帝の命を受けた徐福は鮑を求めて東方へ船出します。徐福は始皇帝の存命中に仙薬を持ち帰ることはできませんでしたが、東方の海に蜃気楼を見たことから、不老不死の仙薬である鮑がその方角の理想郷にあると信じられていたそうです。 また、日本での鮑伝説のひとつに倭姫にまつわるものがあり、倭姫が国崎を行幸なさったときに海女が鮑を差し上げたことに由来し、国崎には御贄調整所というところがあり、本物の熨斗鮑が作られ、伊勢神宮の年中祭事に奉納され続けているそうです。 その他、三国志では関羽が視力回復に鮑を用いて、「千里光」という名が鮑につけられたとか、楊貴妃が美容のために鮑を好んで食したなど、鮑にまつわる話はいろいろあります。
このように鮑にまつわる伝説や話は、鮑を熨斗鮑という儀式用の肴に発展させ、進物の添え物、やがて縁起物、吉祥紋として発展させていきました。 熨斗鮑は進物の印となり、現在も「のし」という形で残り、贈答の熨斗紙や金封の包みに添えられるデザインとなっています。