【読み:なんぶしこんぞめ】
茜染めと同様に岩手県南部地方で古くから染められてきた紫根染めは、ムラサキ科の多年生植物の紫草の根から紫色の色素を得ます。
紫草は『万葉集』や『古今和歌集』にも多く詠まれているように、広く北海道、本州、九州の各地にみられます。飛鳥時代の衣服にも、深紫や浅紫などがあり、いずれも紫根染めによって染めた色で、いかに紫根染めが古くから行われてきたかがわかります。
紫色に染めるためには、紫根を覆う堅い繊維を臼と杵でつびして色素を抽出し、そこに熱湯を注ぎこみ、晒の袋でこします。こするときには、液が出なくなるまで何度ももみださなければなりません。そうして得た染液に、あらかじめ灰汁で媒染した後下染めし、絞り加工を施した生地をひたします。これを何度も繰り返して乾燥させます。紫根染めには絞り染めのほか、糸を染めてからきものや帯を織る先染めも行われています。