【読み:やつくち】
八つ口は、着物の脇のあき部分のことで、身八つ口ともいいます。かつては脇明(わきあけ)とよばれていました。
八つ口と呼ばれる由来は、着物の口が8つあることからだといいます。身頃の脇の「身八つ口」、袖のふりの「振り八つ口」(またはふり、ふり口)、「袖口」と襟、裾の8箇所があきであることから、八つ口という呼び方になったという説です。他にも、袖付けの下を左右に分けてできる口なので、八の字の分かれる形から八つ口と呼ばれるようになったという説もあります。
八つ口は女性と子供の着物だけにあり、男物にはありません。
江戸時代以前に対丈で着物を着て、紐状の帯を腰のところで幾重にも巻いて締めていた頃に比べ、女性の帯幅が広くなり、また胸高に帯をするようになると、上腕部の自由が奪われました。そこで、手の動作を楽に自由にするための工夫で、脇をあけることが考え出されました。八つ口は、いわば見えない襠(まち)のようなもので、体の丸みや厚みからくる前後のずれや高さの差を吸収し、カバーすることができます。そして、子供物の八つ口は、帯代わりの付紐を通すための穴であるといいます。
その他にも八つ口は、通気ができる面から体温の調節や、着付けの際におはしょりや襟元を整えるために手を挿し入れるところ、授乳のときの開口部としても機能しています。