【読み:やくどしのいわい】
災いや障りをまとめて祈って追い払い、それらを避けるために、身を慎み、神仏の御加護を得る儀式を行うことを厄払いといいます。厄年は一般的に、女性は十九歳と三十三歳、六十一歳で、男性は二十五歳と四十二歳、六十一歳となっています。とくに女性の三十三歳は「散々」、男性の四十二歳は「死に」と語呂合わせして、大厄と言われています。女性の三十三歳は娘、妻、母と急激に意識が変わり、からだの運動量や周囲の状況も変化するので、疲れやすく、ストレスもたまりやすくなります。男性の四十二歳も人生の折り返し点に到達して仕事の責任も重く、自分の将来を思い煩う暇もないほど、人のために日々を送るような毎日を心ならずも過ごさなければならず、心とからだの疲労が避けられません。それだけに三十三歳と四十二歳を中心とした二、三年は、心して気をつけなければなりません。 厄年は中国の陰陽思想から来ており、とくに奈良時代、天武天皇はよくこの思想を研究し、また周囲の学識者達にも学ばせて複雑な禁忌を設け、それに祭祀修祓(さいししゅうばつ)その他の方法を営んで、術をつかって厄をよけていました。この厄というのは、天体運行と人間の誕生との位置関係で吉凶をみるのですが、天武天皇の時代から年齢による厄払いがずっと続いているというのも、この年齢に達すると変化が激しいということの表れと思われます。厄を嫌うのではなく、「冠」として人生の節目の一つに取り上げ、みんなで祝って積極的に追い払うというたくましい精神も立派なものです。 本来の厄年は、神事に参与するために身を清め、行いを慎んで、それぞれの世代の指導者となることを神にお願いすることだったようです。十九歳の女性は、そろそろ結婚を意識して家事を教わるように、三十三歳は、子供を教育できる大人になるようにという気持ちで、神に対して恥ずかしくない行動をすることが厄年の本当の意味のようです。