【読み:つや】
現在はお通夜は一晩と決まっていますが、古代は亡くなった人を別の家に移し、そこでずっと肉親たちが祈りをささげました。長い期間で八日八晩、泣き女を集めひたすら泣きに泣いて、別離の哀しさを死者に知らせます。亡くなった本人に自分が死んだということを十分納得させてから野辺送りがはじまるのです。その家は喪屋と呼ばれ、殯(もがり)をするといいます。殯とは、日本の古代に行われていた葬儀儀礼で、死者を本葬するまでのかなり長い期間、棺に遺体を仮安置し、別れを惜しみ、死者の霊魂を畏れ、かつ慰め、死者の復活を願いつつも遺体の腐敗、白骨化などの物理的変化を確認することにより、死者の最終的な「死」を確認することをいいます。死者には青いきものを着せ、死者の代わりに、米を食べる人、酒を飲む人などがいます。これが通夜の席での宴会の原点です。死者が日頃していたようなことを、周りのみんなが代理人となってやって見せ、もうこのような形ではあなたとは逢えないのだという事実を、泣き女たちによって告げるというのが通夜の役割であったようです。またその場で一緒に寝るのも古代からの習慣で、喪屋の中の同じ布団に一緒に寝るという風習もありました。お通夜ではいろいろな儀式が次から次にあるために、遺族たちの心はだんだん落ち着き、肉親の死というものを冷静に受け止めることができるようになります。告別式より通夜の方が人との別れの意味がよく残っているようです。着ていくものをあれこれ考えるより、万難を排して駈けつけ、亡くなった方の思い出を話しながら、代理人として食べ、飲んであげるほうがいい供養になるはずです。故人とひたすらつき合って、じっくりと一夜を共にするのが、いちばん愛情のある別れ方です。