里帰りとは

【読み:さとがえり】

もともとは、婿が三日間嫁の家にいて、四日目に自分の屋敷に帰ることを「里帰りの儀」と呼んでいました。帰るとすぐ妻に恋歌を贈り、妻も返歌をしたためてお互いの心を通わせたのです。家と家の縁結び、本人同士は二の次という結婚制度になってからは、婚家でしばらく生活したあと、実家に帰ってきた娘に相手方の情報を聞きながら大人の知恵を授けるという形式となりました。現在では里帰りといえば、嫁が実家に帰ることをさしています。 福井では「初もどり」といって、婚礼後十日目ぐらいの大安に(現在は新婚旅行が終わってから)新郎、新婦が連れだって嫁の実家に帰る風習がありました。玄関に門幕をはり、部屋ごとの床の間に三幅対の掛軸をかけ、花も松などおめでたいものを生け、両親、父方、母方の親戚全員が玄関前で行列して二人を迎えます。男性は黒紋付、女性は色留袖か訪問着、未婚者は振袖です。新しい家庭でのエピソードなどが披露され、婿の方は一泊して帰り、嫁は三日間居続けました。 また長野県では、この里帰りのとき、黒留袖を着て帰った新婦の肩を、近くの子供たちが棒でたたく「お方たたき」という風習がありました。健康になるよう、またつまらない思いや悩みを出してしまうようにという意味があるとのことです。黒留袖を着て帰る風習は、実家はもうよその家なので改まった気持ちで門をくぐるべきだという無言の教えがあり、他の地方にもあったようです。

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