民俗芸能衣装とは

【読み:みんぞくげいのういしょう】

日本の各地方にある、民俗行事のなかで行われる芸能[=郷土芸能、民間芸能ともいわれる]の衣装のことです。種類も数も多種多様で詳しく述べるのは困難ですが、そのおもな系統は、「神楽(かぐら)」、「田楽(でんがく)」、「風流(ふうりゅう)」、「祝福芸」、「外来楽」などに分けられます。「神楽」は、おもに神官や巫女(みこ)がだいたいその時代の神官、巫女の祭服で舞いました。「田楽」の系統で、「田遊び」や、「御田植え神事」には、早乙女(さおとめ)[=田植えをする若い女性]や田囃子(たばやし)の男たちなどの、日常の支度をいちだんと華やかにした姿で出ることが多かったようです。ただ、「猿楽」などのように「田楽」から発展した職業的な能のほうには、いろいろな衣装が生まれました。「風流」とよばれる踊りは、大勢の老若男女が参加するのが特色であり、多くの民俗芸能の中心となるものですが、その衣装は、時代時代の庶民たちの晴れ着が原則でありました。ただ、疫神を降ろすために美しい「依代(よりしろ)」[=神霊が降臨する際の媒体となるもの]を身につけることもありました。「祝福芸」は、神が落ちぶれた形のものとなり、旅をして、村々に祝福の言葉を告げに来るという信仰のなかから生まれたもので、正月の「万歳」、「春駒」、秋田の「なまはげ」などがあります。これらは、神の仮の姿として、かぶり物や面などをつけるものです。「外来楽」の「伎楽(ぎがく)」や「舞楽」の流れは、舞台芸術として固定化してしまいましたが、民俗芸能のなかには、「獅子舞(ししまい)」として残り、「神楽」や「田遊び」、「風流」の踊りのなかで演じられています。また、信仰と深く結びついている日本の民俗芸能では、衣装よりも髪飾り、かぶり物のほうがより重要視されることがあるのは、日本の芸能が本来、「神祭りの庭」に発するもので、神がかりするための「依代」の名残とみられます。

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