【読み:ひがん】
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれていますが、あれだけ寒かった春も、三月の彼岸をこえると、日に日に暖かくなります。また秋も、土手に彼岸花が現れるころには少しずつ冷えてきて、からだが寒暖の差についていけなくなってしまうことも多いようです。 彼岸は春(秋)季皇霊祭といって、昔から国民の休日でした。お中日は昼と夜が等分され、太陽が真西に沈みます。この真西は弥陀の在所といわれ、太陽に向かって歩く行もあります。生きている岸を此岸(しがん)、涅槃((ねはん)=「さとり」(証、悟、覚)と同じ意味であるとされる)の世界に到達することを彼岸と呼びます。祖霊が無事彼岸に行けるように生きている人が応援します。お墓参りや法要はこの時期がいちばん効き目があるとされているくらいです。また立春、春分、立夏、夏至、立秋、秋分、立冬、冬至の八つの日に善行を修めると今までの悪事も消えるという説もあります。 山登りや野遊びに良い季節で、彼岸団子や牡丹もちを作って配る習わしがありますが、牡丹は霊の住む花として、中国では他の花より大切に育てます。牡丹の花を散らして仏事を行う宗派もありますし、牡丹の花は彼岸にはなくてはならず、この花に似せてつくらせたのがボタモチなのだと思われます。 きものの柄でも、牡丹の花を身にまとうと霊力が与えられ、美しく健康になるといわれています。春は彼岸の日から牡丹の帯をしめるおしゃれな人もいます。きものは彼岸がすむと単衣になり、長襦袢は絽縮緬(ろちりめん)にします。