【読み:ゆかたじ】
浴衣に用いられる生地のことです。
中世、上流社会で入浴のときに身にまとった「湯帷子(ゆかたびら)」は、水に強く、しかも水切れのいい白の麻でしたが、近世、庶民の湯上りのくつろぎ着に、用いられるようになるころには、木綿の普及に伴って、「真岡(もおか)木綿」[=栃木県真岡周辺で産した木綿地]がその主流であったとされています。
明治19年(1886年)に名古屋で「岡木綿」が織れるようになり、近年は、東京、浜松、名古屋、大阪方面で白木綿が生産されています。
特殊なものとしては、贅沢品として「縮緬(ちりめん)浴衣」もありますが、一般には、白木綿に堅固でじょうぶな藍の中形(ちゅうがた)や絞り染めが多く、男物には、白絣(がすり)や縞織りもあり、女物には、綿絽(ろ)や綿縮(ちぢみ)も用いられました。浴衣の用途が、浴用から入浴後の汗取りや夕涼み用のくつろぎ着に、そして、盆踊りや夏祭りの衣装へとしだいに広がり、盛夏の外出着にまでなる一方で、寝巻きにも用いられ、じょうぶな縞や格子の織物から、肌触りのいいガーゼやプリント物も多く市販されています。
機械捺染(なっせん)がひろがると、かつて、最も一般的であった中形や絞り染めの手仕事は、現代では、伝統を伝える高級品として扱われるようになりました。