【読み:かぶきいしょう】
歌舞伎劇、および、舞踊に使用される衣装をいいます。
舞楽、能が、公家や、武士の支配者の庇護(ひご)のもとに発展したのに対し、近世に始まる歌舞伎は、民衆の支持によって、形成されました。つまり、庶民のエネルギーと、その嗜好(しこう)を反映した多くの俳優らの考案によって、「歌舞伎衣裳」は、独自の発達を遂げ、多彩で豊富な種類が生み出されました。
「歌舞伎衣装」は、大別すると、様式的なものと写実的なものに分類されます。概して、様式的なものは、時代物狂言にみられ、公家、武士などの役柄は、有職(ゆうそく)を模したものもありますが、空想上から生まれた超現実的な形の衣装もあります。写実的な衣装は、現実社会の風俗をそのまま取り入れたもので、世話物といわれる写実劇に用いられます。
明治期以降、能装束が解禁され、移入されたものもあり、時代考証に忠実な衣装もあります。また、演出効果のうえで、上衣を脱ぎ、肌脱ぎをして色彩の変化を見せたり、仕掛け物で、早変わりしてみせる特殊な衣装もあります。人間以外の動物、妖怪変化までも表現します。