【読み:うたえもんよう】
「葦手(あしで)文様」と同じように、文芸的性格をもち、和歌をふまえたものです。一首の意味を象徴的な形や絵にするものと、その歌の一句の文字を書き入れるものとがあります。平安時代中期に成立し、扇絵やその他の調度類にもほどこされました。染織品における当時の遺例はありませんが、文献には、しばしば見いだせます。とくに、『栄花物語』には、歌合(うたあわせ)や根合(ねあわせ)など各種の晴れやかな集まりに出席する女房の唐衣(からぎぬ)や裳(も)などに「歌絵文様」がほどこされた記述が多くでてきます。鎌倉時代以降は、ほとんど影をひそめていましたが、その伝統は、江戸時代中期にはよみがえり、歌意をあらわす文様に、さらに和歌を散らした小袖などが残されています。江戸時代中期を中心に『和漢朗詠集』をとり上げた小袖や打掛などが数多くみられますが、それらも「歌絵文様」の一種と考えられます。