【読み:おうぎちらしもんよう】
流水に扇子を散らす平安時代の遊びを意匠としたものと考えられ、全開や半開、または、閉じたものなど、幾本もの扇子を散らした文様です。また、地紙だけを散らしたものを「扇面散し」などともいいます。形の優雅さに、さらに末広としても吉祥の意をこめたものだと思われます。漆工品には、鎌倉時代の『扇散し蒔絵(まきえ)手箱』があり、染織品では、京都延暦寺に1310年(延慶3年)の墨書銘がある打敷の綾に、「檜(ひ)扇散し」がみられます。江戸時代にも好まれましたが、とくに扇絵師宮崎友禅斎によって興隆した友禅染の意匠では、扇散し文様が注目されます。