【読み:ほうおうもん】
瑞祥(ずいしょう)の鳥、鳳凰をあらわした文様です。鳳凰は、中国の空想上の鳥です。雄を「鳳」、雌を「凰」といい、身に五色の文彩があり、梧桐(ごとう)にすんで竹の実を食べるといわれています。形は、前は麒麟(きりん)で、後ろは鹿、首は蛇、あごは燕(つばめ)、背は亀、尾は魚で、頭に鶏のようなくちばしがあるとされています。すでに殷(いん)代の青銅器に古雅な表現で重要な意匠として注目され、唐代には、孔雀(くじゃく)などを参考として、華麗な形式が完成しました。日本では、唐風のものが正倉院宝物中の染織や、そのほか諸工芸の意匠にみられます。また、厳島神社小神宝の錦半臂(にしきはんぴ)には、なごやかな和様の表現がみられますが、平安時代には、車輿(こし)や調度など多方面に文様として採用されていました。その後は、各時代それぞれの遺例があり、小袖模様としては、『御ひいなかた』(寛文7年)に採用され、今日なお和服などにおける吉祥文様の代表的な存在といえます。