【読み:ついしゅ】
彫漆(ちょうしつ)の一種です。朱漆を百回内外も厚く塗り重ねたものに山水・花鳥・人物などを彫り出したもの。中国では剔紅(てつこう)といわれ、宋代以降盛んに行われました。室町時代に日本に渡来しました。朱漆を塗り重ねたものを「堆朱」といい、黒漆を塗り重ねたものを「堆黒(ついこく)」、黄漆を塗り重ねたものを「堆黄(ついおう)」といいます。黒、黄、緑、褐色などの色漆を塗り重ねたものは「彫彩漆」といい、花を朱色、葉を緑で表したものを「紅花緑葉」といいます。
幾重にも塗り重なった漆を彫り、磨きをかけることで積層断面の美しさが際立つ、独特の工芸品です。薄く塗った漆を、乾かしてから塗ることを何度も繰り返して、模様に必要な厚みが出るまで続けます。それにより、重厚で深い美しさが生まれます。堆朱の製作には数ヶ月から数十ヶ月を要するといわれ、緻密な努力が必要とされます。
堆朱は盆、箸、器、印籠、香合などに施されます。有名なものに、村上堆朱(新潟)、仙台堆朱(宮城)などがあります。