【読み:いっちんぞめ】
染め技法のひとつで、一珍糊といわれる、小麦粉やうどん粉を主原料にした澱粉に、石灰を混ぜたものを用いて染めます。一珍糊は、乾燥するとひびが入りやすいのが特徴です。糊置きして染めた後、糊に細かいひび割れを作り、そこに染料が入りこむことで「氷割れ」とよばれる、独特の染め上がりになります。一珍糊のもうひとつの特徴は、水洗いしないでもよいことで、へらでかき落として糊をとります。そのため、掻き落とし糊(かきおとしのり)ともいわれます。細い糸目を引くことができる友禅染が台頭してくると、一珍染めは廃れてしまいましたが、現在また京都の工房で、一珍染めの再現が試みられているそうです。一珍染めは友禅の糊が考案される以前からある技法で、古代友禅ともよばれます。