【読み:おびいわい】
女性の体は、黄体ホルモンの分泌が盛んになると体がまろやかになり、同時に全身の筋肉が弱まり、腹筋もたるみます。さらに体重も増加します。妊娠はまさにこの状態ですが、妊娠でふくらんだお腹をそのままにしておくと、どこまでも大きくなる恐れがあるので、胎児の安定と妊婦の健康と美を願い、胎児部屋であるお腹をきっちり布で固定します。この布を腹帯といいます。
腹帯は白木綿と紅白の絹を妻の実家から贈るのが習わしで、五色の糸や紅白の糸をつけます。白木綿はやがて赤ちゃんの肌着やおむつに、紅白の絹は産着に仕立てるという合理的な贈り物でもあります。
帯祝は、安産を祈るために古代から夫婦が中心となって行った儀式で、本人にからだの保護を自覚させ、夫や家族や周囲の人たちに、生まれ出ずる子供の為の心の準備をさせます。
平安時代は「着帯の儀」と呼び、「斎肌帯」「結肌」を妊婦の肌に直接巻きました。天皇家や公家は白絹、武家は白布、木綿が日本に輸入された室町時代からは木綿の腹帯が一般的となりました。長さは一丈二尺で、夫が妻の左から右に巻き、結びます。ゆはだという呼称が今では岩田帯と変化しました。
帯祝を妊娠五カ月目に行うのは昔からのきめごとで、医学的にはこの時期がいちばん流産しやすく、胎児部屋を固定するという主目的にかなっています。祝いの日は、子・戌・酉の三種類の日を選びますが、戌のお産が軽いことにあやかり、今は戌の日がいちばん人気があります。子は子孫繁栄、酉は大空に羽ばたくような偉人となる、という意味があります。
良い子を生み、育てるために、帯祝は必ず夫婦で行いたい儀式です。