初誕生日とは

【読み:はつたんじょうび】

最近はバースデーケーキに1本のろうそくをたて歌をうたって、満一歳の誕生日を祝いますが、日本では奈良時代からの趣向の一つで、「一升もちの祝」という儀式があります。
やっと立てるかまだはいはいしかできない子供の背に、一升のもち米でついたもちを紅白の紐でくくりつけ、座敷をはいはいさせます。一升を一生と考え、一生食べものを持って歩くように、一生食べ物に不自由しないように、一生幸せになってほしいなどと願いをこめた縁起行事です。父方、母方の祖父母、兄弟を招き祝膳を囲みます。祝膳は鯛の焼きもの、和えもの、煮もの、お吸いもの、御飯の一汁三菜が一般的です。「力もち」「立もち」といって縁起のもちをついて近所に配ります。一升もちを背負う赤ちゃんの衣裳は紋付で、およばれの人たちも正装でご相伴するのが礼儀です。
奈良地方に「職業占い」という儀式もあります。床の間近くに、筆、本、大工道具、人形、そろばん、裁縫道具、お菓子などを置いて、赤ちゃんをそこまではいはいさせて物を選ばせます。商人の子は、そろばんの五つ珠を鳴らして注意を引き、そろばんを選ぶようにしたり、大人が必死になる微笑ましい縁起行事です。こちらも祝膳は一汁三菜、鯛が中心になります。衣裳は母方の里から贈られたものです。
初誕生日を町全体で祝う地方もあります。「ねり子祭り」と呼び、淡路島、洲本の由良地方に昔からある行事です。お参りをすませた後、子供を抱いたまま町内をねり歩くので、ねり子祭りという名称がついたものと思われます。二月十日、数え年三歳になる子供たちに晴着を着せ、白裃を着た父親が、1kmの距離を抱いて走って神社まで駈け上がってお参りする祭りでしたが、最近は様変わりし、父親の衣裳も祭りの内容も変化しているようです。子供の晴着は男女共に大人用の振袖か訪問着を掛着にして肩揚げをします。三枚重ねて着せ、男の子は白絹、女の子は淡紅色の絹の布を首に巻き、母親の口紅でひたいと両頬に十字を描くのが習わしです。母親は丸髷を結い、黒留袖を着て子供と共に祝膳を囲む披露宴に出席します。この行事は結婚披露宴と同じ意味があり、子供が生まれ、その子が無事に育って誕生日を迎えたとき、ほんとうの意味での結婚を周囲から認められるので、現在でもこのお祭りは盛大に行っているようです。

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